夏の光のなかで
 
クランクインは8月11日でしたが、大西さんと考えて、経験のないスタッフに早く仕事に慣れてほしかったのと、インしたあとに夜の撮影が少ない方がラクだという理由で、前撮というのかな、8月7日、8日、9日、夕方から数時間撮りました。花火を撮らないといけないってこともありました。そこから、途中、キャスト交代による構想の練り直しのための三日間の空きもあったけど、30日のクランクアップまで一気に走り抜けた。久々でちゃんと監督やれるかどうかの心配の前に、動きだして止まらなくなっていたって感じ。いまからあやまっても遅いけど、まわりはだいぶ迷惑したでしょう。
 
とにかく、夏。ものすごく暑かった。その上に、仕事の分担も指示の流れもどうなっているのかわからないような状態からスタートし、スケジュール通りにはやれない、いろんな問題がかさなって、文字通り「映画は戦場だ」という現場。ぼくは、映画となると気合いがふだんとちがってくるから平気なんだけど、みんな、よく一緒にやってくれたと思います。後半はとくに、毎日、興奮で眠れないせいもあって、夜明け前から起きて、信じられないくらい意欲が湧いてくるのを感じながら、その日やることを書いた「号外」を作りました。58歳の自分の体力にも、朝になるとみんなが来てくれるのにも、ありがたいなと思いました。
 
狙ったことをその通りにやれるかどうかではなく、今回の予算と条件、このスタッフとキャストで、やれることをひとつひとつ発見してゆく。アマチュアにはアマチュアならではのよさがある。たとえば、約束事に縛られない自由さがある。そういうものを最大限に活かすことが大事で、そこから出てくるものが、出会うべき現実、出会うべき岡山につながってくると思った。見込みちがいやミスも大して気にしない。結果を心配するよりも、撮れるだけ撮ってしまおうと、ひたすら貪欲になっていました。
 
夏の光、岡山の光。上から来るし、すごく変化するんですよね。
これに負けないように撮る。いろんな意味で、そういう勝負だったかな。ルックはゴダールの『決別』で行こうと話していたのは、そんなにうまく行かなかったかもしれないけど、風景の緑に光がふりそそいでいる。あとはどうやって影を作るか、闇を見つけるか。それが問題でした。大西カメラマンが疲労困憊しながらもがんばってくれたし、パナソニックAG-HVX200というカメラが、やっかいな反面、やっぱりいいんです。
大西さんとは、好きな映画がだいたい一致しているんで、やりやすかった。半分冗談なんだけど、今日は鈴木清順で行こうとか、ここはホウ・シャオシェンといった調子でやれた。でもね、「シナリオを読めばわかるだろう」という任せ方はしてませんよ(笑)。
そして、一週間で人が変わったみたいに成長する若いスタッフたち。
みんなで作ってゆく。
暑さに負けてなんかいられないと思いました。