2008. 9.1〜9.6.

みなさん、こんにちは。
9月になりました。
天候不順の、「解けない問い」だらけの夏は、まだ終わっていませんが、
次のステップへと動き出したいですね。
天候がどうであろうと、世界がどうであろうと、
とにかく生き抜く。それでいいとしましょう。
これから、『岡山の娘』の、11月のポレポレ東中野でのレイトショー公開、さらにその先の全国展開に向けて、この「質問に答える&日録」を書きつづけます。
なお、『岡山の娘』をめぐって、わたしに届いたもの、わたしの耳と目に入ったものを、ここに無断引用・掲載することがあります。
それから、有名無名を問わず、いろんな人の名前が出てくるでしょう。
それを承知していただいた上で、どんなかたちでもいいですから、質問・意見・感想など、遠慮なくお寄せください。

9月1日(月)
立川シネマシティーで『TOKYO!』 を妻と見る。
夫婦50割引のつもりだったが、それがなくても「映画の日」で1000円になっていた。
オムニバス作品。M・ゴンドリー、L・カラックス、ポン・ジュノの三監督、それぞれに東京に対して「失礼していない」というものがあり、アイディアも大胆。
しかし、それぞれのアイディア(椅子になるヒロインとか、徹底してスーパーなドゥニ・ラヴァンが最後まで妥協しないとか、東京中が引きこもりになるとか)の先の、それでどうなるんだという展開がない。
そして、結局は「なぜ東京なのか」が見えてこない。
と文句を言ってしまうが、謙虚に考えてみれば、『岡山の娘』も、父がまだ見ぬ娘に会いに来るというアイディアの先の展開がなく、ほんとうは「なぜ岡山なのか」も弱いといえば弱い。いきなり、妙なことになった。
何がちがうのか。いろいろあるけど、あえてあまり深刻にならないようにオリンピックの余韻のなかで言うと、『岡山の娘』でわたしは自己ベストを出している。『TOKYO!』の三人の仕事は、とうていそんなものじゃないでしょう。

9月2日(火)
映画美学校第2試写室で、『岡山の娘』のマスコミ試写の第一回。
実は、これからの上映で使われるDVカム版の『岡山の娘』を、わたしはまだ見ていない。
お客さんを入れる前に、映写技師の千浦さんと、映像と音のチェックをおこなった。
冒頭の四人娘のショットが、しっかりときれいなので、うれしくなった。
いちいち名前をあげないことにするが、33人のひとが見に来てくれた。
ポレポレの大槻さん・小原さん、スポッティッド・プロダクションの直井さんによれば、相当濃い面子が揃って上映後の反応もすごくよかった、とのこと。
とにかく、握手、握手、握手であった。
東京駅近くの「加賀屋」で、原將人さん、寺田聡さん、佐々木英三さん、吉野晶・鈴木一博夫妻、それに宣伝メンバーの河野さん、うちの夫婦の八人で飲む。
天才監督原將人とは、何年ぶりだろう。おたがいに、ドゥルーズの『シネマ2』を踏まえてその先を歩こうと話した。彼はなんと『岡山の娘』について「ついにゴダールに達した。いや、ゴダールを超えた」と言ってくれた。
国立の住民である晶・一博夫妻とわたしたち夫婦は、国立に戻ったあと、もう閉まっていたラーメン屋「萬笑」に押しかけ、さらに飲んだ。痛飲。
「萬笑」のアキさん、イズミちゃん、ありがとう。

9月3日(水)
福田首相退陣のあとのゴタゴタを、インターネットのニュースで追う。
男たちはもうだめ。では、小池百合子や野田聖子でいいのか。
もっとかっこいい女性首相候補の出てくるシステムが、この国にはない。
去年、『岡山の娘』のラッシュを見て頭をかかえているとき、
安倍退陣のニュースに対して、
「総理大臣がやめても、おれは絶対におりないよ」
と、自分に言い聞かせるように言ったのを思い出す。

9月6日(土)
あきる野市の西多磨霊園で、父の七回忌。
東京近辺にいるいとこたちが集まった。
当然、わたしの弟で『岡山の娘』のプロデューサー兼編集の福間雄三も。
「最近は映画関係のこと、やってるんだけど」とか親戚に言っている。
午後5時すぎ、国立・国分寺方面に戻ってくる。
そこから約4時間、妻と私を困憊させる事態が……。
きりなく次から次にやっかいなことが起こってくるというのは、かなり映画的である。
などと思ったりして、苦難に耐えるのが、肩書を〈映画監督・詩人・文化研究者……〉の順番にしたいと願う最近のわたしだ。
なんとか事態に片を付け、家にいちばん近い居酒屋「旬家」で飲む。
居合わせた法政大学中和寮の学生グループに『岡山の娘』のチラシわたす。

〈11月22日のオールナイトの番組内容は?〉
いまのところ、
『青春伝説序論』
監督・脚本/福間健二 1969
『ある通り魔の告白 現代性犯罪暗黒編』
監督/若松孝二 脚本/出口出(福間健二) 1969
『悶絶本番 ぶちこむ !!』(原題『ライク・ア・ローリング・ストーン』)
監督/サトウトシキ 脚本/立花信次(福間健二)1995
『急にたどりついてしまう』
監督・脚本/福間健二 1995
の、なぜか1969年と1995年の二本ずつ、というのを考えています。
『ある通り魔の告白 現代性犯罪暗黒編』、ウワサのわたしの主演作ですが、プリントの状態が心配で、いま確認を頼んでいるところです。

〈足立正生監督の『女学生ゲリラ』にも出ていますね?〉
これはDVDにもなっているので、最近見直しました。恥ずかしくてとても見れない。それをなんとか我慢して。芦川絵里ちゃんが、ありえない高校生で、おかしい(このあと続けて撮影した『処女ゲバゲバ』のヒロインになりかかっているのだとしても)。
わたしについての見所は、滝壺で泳ぐシーンぐらいかな。三月の撮影だったと思うけど、気持よさそうに泳いでいる。水泳、得意なんです。それから、機関銃を持って立っているのを、ワイダの『灰とダイヤモンド』のマチェクみたいだと、足立さんがよろこんでくれたのをおぼえています。

9月2日の試写に来てくれた足立さんとは、おそらく35年ぶりくらいの対面だった。足立さんが日本に戻ってから今日まで会えなかったのは、いろんな偶然が重なったという以上に、〈足立正生体験〉の深さがわたしの動きを重くしていてからだと思う。ヨーロッパを放浪していた男が娘に会うために岡山に帰ってくるという『岡山の娘』を作って、ようやく、帰ってきた足立さんに会うことができた。そういうことだったのだ。