2009.1.12〜2009.1.18
1月12日(月)
明日からの大学の授業の準備。必死にやる。
午後、ジャック&ベティに。
谷保、武蔵小杉、横浜、黄金町のコース。
『岡山の娘』編集のために幻野映画事務所に通ったときは、
谷保、武蔵小杉、横浜、屏風ヶ浦のコース。
途中下車して遊ぶほどの暇がないのが、残念。
電車のなかでは、普通は、
本を読むか
寝るか
景色を見るか
人間を観察するか、だろうが、
きょうは頭のなかで詩をひとつ書いた。
(長くなるので、作品略。)
上映、きのうまでのHDVからDVカムに切りかえたので、
念入りに映像チェック。
集中したので、ひと息つきたくなった。
一緒にチェックした弟と「松林」という店で、ビール。
そして紹興酒に。この中華風居酒屋も、かなりすごい。
結局、遊んでばかりいる(という人生になった)ようで、
ひりひりした空気のこの不況下、申し訳ないのであるが、
国立に戻り、「奏」のライヴへ。
3月に大阪へ移住するという塩本彰さんのギターとMCに、
太田・土井・宮野・佐藤の「管」四本というセット。
大学のこと、横浜上映のことなど、
なんとか頭から追い出して、
音楽に身を沈める。
1月13日(火)〜16日(金)
この4日間、日付を特定するとやばい事情があるので、まとめて書く。
まず、授業。
映像文化論入門。
ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』(1986)に入る前に、
先週発見したサイレントの『Making an American Citizen』(1912)を見る。
ジャームッシュ作品には、内容的にも、感触的にも、技術的にも、
映画とアメリカの「初期」に直接つながっているものがある。
グリフィスとフォードが基礎を作ったハリウッドのメインストリームと
連絡しつつも、それとはまったく別な回路なのだ。
アメリカ人になる。そのことにも、さまざまな回路があるように。
映像論。
フェリーニの『甘い生活』(1959)とアントニオーニの『夜』(1961)を対決させる。
どちらも、マルチェロ・マストロヤンニ主演。
それぞれの方法で「現代の症候を楽しんでいる」が、
いまの時点で、かつ(言えば身も蓋もないことになるが)低予算で、
真似しやすいのは、アントニオーニの方だ。
表象言語の諸問題。
荒川洋治の作品「秘密」「冬のそよ風」「丘」を読む。
作品の「鑑賞」がだんだん謎解きクイズみたいになってゆく。
学生たちにわかってもらおうと無理すれば、
答はなんとか捻りだせる。でも、相当の珍答だろうが。
実践英語、三つのうち、
『楽しい映画文化史入門』の方は、初期のハリウッド・スターの興隆。
とくにダグラス・フェアバンクス、メアリー・ピックフォード、
ルドルフ・ヴァレンチノの三人について。
ヴァレンチノの俳優になるまでの半生、おもしろい。
あとの二つは、今日の新聞とマクルーハンを読む。
新聞は、中央大学後楽園キャンパスの教授刺殺事件。
大学の1時間目というのは、授業をやっている教室以外は、
しんとしている。恐ろしい事件もおこるだろうと思う。
マクルーハン。1960年代前半のソ連で、
〈チャールストンは許されたが、ツイストはタブーだった〉。
前者は、ホットで、工業化初期の「機械」に通じる、操り人形的な動き。
後者は、クールで、原始的で、反動的な全身表現。
というあたりを読む。
学生たちは、しかし、チャールストンもツイストも知らなかった。
芸術表象文化研究。
これも、荒川洋治の詩を読む。
なぜか大学院生相手だと、おもしろく読む感じにならない。
以上、授業のこと。
12月の横浜学生映画祭で上映された『古屋の次第』を、借りたDVDで見る。
大阪芸術大学の加藤秀仁の卒業制作作品、2007年。78分。
すごい。
キム・ギドク、ジャ・ジャンクー、小説家ジム・トムプソン、
もうひとつ言ってよければ「狂った朝日」のブランキー・ジェット・シティに
通じる、強烈な作品だ。
去年見ていれば、ベストテンの上位に入れただろう。
フィルムで撮っている。ぜひスクリーンで見たい。批評を書きたい。
いまおかしんじ監督『イサク』(公開タイトル『獣の交わり 天使とやる』)の
初号試写に行く。電車を乗りまちがえて遅刻し、最初の5分を見逃したが、
見ごたえ十分。いいなあと感心するシーンが次々に展開。
脚本、港岳彦。撮影、鈴木一博。
港さんは、文学的な誠実さと切実さの人、自分の詩をもっている人だと感じた。
その「文学」をていねいに(だが、クドさなしに)ほどいていく映像があった。
キリストの足に(全身も出てきたが)驚かされる。
新宿「さくら水産」での打ち上げに参加。
新宿にむかう電車から、初対面のわたなべりんたろうさんと話す。
彼の豊富な「情報」に接して、
自分が、とくに、最近の外国映画、ほとんど見ていなかったと気づかされた。
ヒロイン役の吉沢美優ちゃんとも話す。
「映画初出演で、6日間の撮影で、あれだけやれたら大したものだ」と励ます。
人間のやること。たいていのことは、それほど力んでやることはない。
力まずに、でも、だれないように、やるのだ。
映画だって、そうだろう。
60歳近くなって、そんなことがやっとわかる。
いまおかしんじ監督の作品は、それを教えている気がする。
そんなことを考えているうちに、16日の夕方になった。
新宿のベルクで妻と待ち合わせて、
新宿眼科画廊での「ほたる日和」。
ほたる(葉月螢から改名した)と中島朋人の芝居(映像付き)。
落語の「転宅」をもとにしたコントで、
まあ、ほたるちゃんだから許されるというものか。
そのあと、ゴールデン街。話に聞くばかりで
行ったことのなかった「鳥立ち(トダチ)」に。
1月17日(土)
横浜、相鉄ムービルで瀬々敬久監督『感染列島』(感想、略)を見たあと、
関内に出て伊勢佐木町界隈を散策
(こちらについても、感想がまとまらない)。
午後5時すぎにジャック&ベティに到着。
『岡山の娘』、今日はお客さんがよく入った。
知り合い&知り合いの知り合いに頼っている動員であるが、
おせじでなく、魅力的な女性客が多かった。
上映後のトーク、金子遊さんと。
雑誌「映画芸術」のインタビューの聞き手も、彼だったが、
今日も申し訳ないほどしっかり準備してきてもらった。
やはり「映画芸術」に書いている若木康輔さんも来てくれた。
こういう若い世代から応援も受けて、
先につながるような交流ができたということ。
『岡山の娘』をやった大きな収穫である。
「聚香園」での打ち上げから、
横浜に詳しい金子さんと
松島みき子さん(トークの写真を撮ってくれている松島君のお母さんで、
茅ヶ崎市議会議員で、元気いっぱいの人!)
の先導で、野毛方面、ディープな横浜の夜の探訪へ。
「野毛通信社」で出会ったみなさん、エールを送ります。
横浜の「構造」がやっと少しずつわかってきて、
明日は『ヨコハマメリー』の中村高寛監督と話をするのだ。
1月18日(日)
午前中、国分寺の母のところに。
午後2時前に戻り、1時間ほどパソコンに向かってから、横浜へ。
日曜日で、武蔵小杉駅も、横浜駅も、人があふれている。
夕暮れの黄金町。
ここは、ちょっとさびしい。
中村高寛監督とのトーク。打ち合わせなしでやった。
今回のジャック&ベティでの上映が、
『岡山の娘』が『ヨコハマメリー』に出会う
という、なにか運命的な、うれしい機会であったことを、
いくつもの意味で確認。
「聚香園」での打ち上げは、今日も盛り上がった。
志村役の真砂豪が横浜に来て出会った人たちをはじめ、
横浜の好男好女が集合。
中村監督は、やはり横浜で、ボクシングのカシアス内藤を
撮るという次回作の撮影に、来月から入るという。
それやこれ、話題がとびかって、いけない、中村監督が12月に会ってきた
中国のジャ・ジャンクー監督の話をするのを忘れていた!