大地を受け継ぐ【岡山映画祭2016上映作品】

公開年:2015年
監 督:井上淳一
時 間:86分
出 演:樽川和也、樽川美津代

日 程:2016年11月4日(金)13:30〜(上映後=井上淳一監督トークあり)
会 場:岡山県天神山文化プラザ 〒700-0814 岡山市北区天神町8-54

写真:©「大地を受け継ぐ」製作運動体

それでも、この土地で生きていく

「あいときぼうのまち」「アジアの純真」(脚本)、「戦争と一人の女」(監督)で、社会問題に鋭く切り込んできた、井上淳一監督の初のドキュメンタリー作品。原発事故で父を奪われ、土を汚され、それでもこの土地を守り続ける息子。彼の、言葉をひとつひとつ選びながらの、魂がこもった独白に心揺さぶられる。フラワーカンパニーズのエンディング曲に感動。
(上映企画スタッフ:吉富真一・赤松章子)
 

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岡山には友人が二人いる。映画を通して知り合った友だ。
彼らから岡山の映画状況はよく聞く。東京でやっている映画を岡山では観れない、観れたとしても相当のタイムラグがある。
シネコン花盛りは東京でも変わらず、お客さんが入る映画が優先される。邦高洋低の今、かかる映画は邦画が圧倒的で、五年前なら普通に劇場公開されていた洋画がDVDスルーされたり、公開されても単館系の映画館のみだったり。
で、東京でも単館でしか公開されなかった洋画は地方でも単館で公開され、本来そこで上映されるはずだった我々が作るような規模の映画がトコロテン式に押し出される。いや、仕方ないのだ。
公開されても、我々の宣伝規模では世間にそういう映画が存在しているということすら届かず、結局お客さんが入らない。
地方の単館系の映画はどこも苦しい。少しでも入る映画に流れるのは当たり前なのだ。
というようなことを「現在に日本映画の上映状況を語る」と題されたトークショーで語れればと思っています。もちろん、愚痴を言っていても仕方ないので、これから我々が出来ることを含めて。
さて、そのような状況なので、『大地を受け継ぐ』もまた岡山での上映を危ぶんでいたのですが、岡山映画祭に呼んでいただいて、感謝ももちろんなのですが、ホッとしています。
本作は、原発事故二週間後に農作物出荷停止の報を受け、自ら命を絶った父の後を継ぎ、農業を続ける男性の「声」を撮ったものです。
男性は、東京から訪れた学生たちにこの五年前の出来事や思いを語ります。
初めて知る福島の現実に学生たちの顔がみるみる変わっていきます。いえ、彼らが受けた一番のショックは、その現実というよりも、福島で暮らす人々がニュースの中にいるのではなく、自分たちと何も変わらぬ「普通」の人であるという動かしようのない事実だったのではないかと思います。
福島第一原発から岡山駅までは910キロ。これはその910キロ先で、車なら11時間25分の地続きの場所でいま尚続いている現実です。
この機会に是非、観て、知って下さい。知らなければ、何も始まりません。
この映画は主人公・樽川和也さんの家の居間に皆さんをいざなうことでしょう。そこでお会いするのを楽しみにしています。

『大地を受け継ぐ』監督:井上淳一

映画『大地を受け継ぐ』Webサイト

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