高齢者の貧困と社会的孤立

2017年3月20日

先日18日,NPO法人岡山高齢者・障害者支援ネットワークの研修会がきらめきプラザにて行われた。私は,会員としてそのNPO法人の活動に参加しており,今回の研修会に参加した。今回は,明治学院大学の河合克義先生をお招きして「高齢者の貧困・孤立の現実と福祉の方向性を考える」というテーマでご講演頂き,だいたい120人ぐらいの会員が出席し,お話を伺った。
河合先生は,近年,「老人に冷たい国・日本」~「貧困と社会的孤立」の現実~(光文社新書)という書籍を出版されるなど,この分野について長年研究されている先生で,NHKスペシャルの番組にも多数関わられ,そのことについてもお話があった。

 
ご講演の冒頭で,社会保障は何を目指すのか,という点に関して,河合先生は,社会保障と民主主義の関係を次のように説明された。すなわち,社会保障は,(市民の)生活を安定させ余裕をもたらし,いろいろな情報を得て考え,自分で判断できるようにすること,社会保障は民主主義の基盤をつくるものであると。私は,民主主義と社会保障の関係性について,特段考えたことがなかったことから,このような指摘に大きな感銘を受けた。

 
実態の調査を通じて,事実を把握し,これを評価することを重視されている河合先生の講演は,映像の紹介なども交え,工夫されており,90分程度の講演は,あっという間だった。お正月三が日をひとりで過ごす1人暮らしの高齢者の割合は,都市部で3割強,地方で2割半から3割弱という,高齢者が孤立している寒々しい現実を示すデータが紹介されていた。
また,介護保険制度がカバーしている範囲について,要介護認定者の割合は,2015年の時点で,18.5%であり,実際にサービスを利用している人の割合をその8割とすると,14.8%程度であると考えられることが指摘されていた。

 
成年後見制度を通じて,高齢者と関わることが多い法律専門職は,だいたい15%ぐらいの限定的な高齢者にばかり目が向いており,それは現実には極一部の高齢者の問題と向き合っていたことになる。NPO法人支援ネットワークは,成年後見制度を通じて,高齢者の支援を行っているのが現状であるが,もっと広い視野をもつ必要があると感じた講演だった。

 
社会保障が不十分な社会においては,国民の自律的,主体的な判断は損なわれ,民主主義が危うくなると解釈できる河合先生のご指摘に,昨今のポストトゥルースの世界的な潮流にあって,人の長い歴史により培われた人権概念すら,単なる政治的な建前に過ぎないものとみなされてしまう危うい時代に至っているその原因の一つを知らされたように思われた。

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