東京地検特捜部

2010年1月24日

私たちの頃は,司法修習が終了して,裁判官,検察官,弁護士へとなっていく際に,検察官任官の希望は少なかった。修習時代から,研修所の検察教官は,修習生に対して教官の自宅に誘ったり,実務修習地までに出向いてそれとなく任官の勧誘をしてたりしていた。つまり,検察官は,修習生の目には法曹としての魅力に乏しいと写っていたのである。裁判官は職務の独立性が憲法上認められ,弁護士はもちろん弁護士自治に守られて何者にも干渉されないで独立して職務を執行することができ,そのことが法曹の仕事としての神髄でもあり,魅力と考えられていた。一方,検察官は,行政の一組織であり,そのため検察一体の原則が貫かれ,上命下服の組織が,法曹の本質と異なると考えられていたからである。しかし,ロッキード事件,リクルート事件など特捜検事が活躍する事件が発生すると,検察官任官希望者が増えて,検察教官も検察任官志望者を掘り起こす苦労から解放されていた。ちなみに最近は法曹人口が増加し、任官希望者に事欠くことはなさそうである。

つまり,東京地検特捜部は,検察官となってやってみたい魅力ある部署なのである。権力者を,司法の場で裁くことに生きがいを感じている人たちの集まりなのだ。検察の魅力はここにありと思っている人も多いであろう。同期で同クラスであったK氏,同じ岡山修習であったA氏はいずれも東京地検特捜部に長くいた。両名ともまだ若かりし頃で藤波代議士が逮捕されたとき,黒塗りのタクシーの後部座席の同人の横側にK氏が得意げに座っていた光景を覚えている。ふたりとも今は高検検事長になっている。その東京地検の検事の集団が小沢さんの事情聴取に踏み切った。なにもかくたる資料なしでは動かないであろう。検察なりに確度の高いシナリオを描いているはずである。ここで,結局何もないのであれば,東京地検特捜部も小者の集まりになったと思わざるをえない。

小沢さんの事情聴取後の記者会見のように,結局何もないのか,それとも彼の政治生命の危機の始まりなのか,今の状況では判断しがたい。しかし,小沢さんが,何らの職務権限があった時代のことではなさそうなので,田中元首相のように贈収賄事件に発展することはない。そうだとすれば,政治資金規正法違反事件だけとなるが,それではやはり追っているものが小さいという感じは否めない。

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