座右の銘

2010年1月31日

自己紹介を要請されるとき,「座右の銘」を尋ねられることがある。たいてい4文字熟語の単純な内容で,その人の行動理念,目標などを端的に表す言葉である。座右の銘はなんですかと聞かれれば,特にありませんと答える。調査標などでは空欄にしておく。自分の生きる目標は他人様の言葉を借りる必要はないなどと少々,傲慢な気持ちもある。

しかし,司法試験に合格して,法律家として歩み始めるころ,法律家としての生き方に力を与えられる言葉にであった。とても好きな言葉であり,自分を振り返り,決断を要する場面に立たされた時に思い起こされる言葉である。それは,座右の銘というのかもしれないが,文章になるのですぐに人に紹介することはできない。青年法律家協会が発足したときに法哲学者であり,立命館大学の学長も務められた末川博さんの話された言葉の一節である。「虚偽を排し,不正を憎み,正義を愛するがゆえに平和と民主のために闘う。これが法学を学び学んだことの意義でなければならない」である。法律を学んだのではなく,法学を学んだのだから,この法学を学んだ意義を忘れないでいたいと思ったのである。司法修習を終えるときに私の弁護修習を担当した弁護士から色紙に一言書き残すようにと言われ,「法学を学んだ意義を確かめたい」と記した。この言葉だけでは何も伝わらなかったかも知れないが,その言葉の背景には末川先生の話があったのである。

こんな言葉を思いだしたのは,昨日青年法律家協会岡山支部の集まりがあったからである。岡山支部としての独自の集まりも活動も長年なかったが,勉強会などを再開しようと会がもたれたのであった。集まった人たちのほとんどの人は「青法協」がどんな活動をしてきたか,司法改革運動で果たした役割などほとんど意識されていない。わいわいがやがやとこれからの勉強会の計画などが話されているなか,昔のことをひとり思い起こしながら,この言葉が脳裏に浮かんだのである。

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