揺らぐグレーゾーン廃止

2006年8月26日

今週の事件処理に要した時間の多くの部分を負債処理関係の事件に充てざるをえなかった。4件の新たな受任通知と既受任事件に関する処理のためである。スタッフの処理能力を超える処理量となっている。最近の新しい傾向として、破産申立事件として受任し、債務調査をすると利息制限法を超える過払い請求債権があることが判明し、破産をする事案かどうか迷う事案が多くなってきた。宣告後にこの過払い請求をしてこれを任意配当に充当する場合もある。東京でマイホームを取得し、家族4人がごく平凡な生活を営んでいたところ、妻に内緒でサラ金から借りたのが始まりで、住宅ローンなどの支払いのためなどにも借りるようになり、その月々の支払いにも窮するようになり、初めて妻と相談し、離婚の決断をすることになった。離婚後、なんとか住宅ローンを支払ってこれを妻への財産分与の一部にと考えたがそれもできず、考えが整理つかないまましばらく身を隠すように放浪し、実家の岡山に帰り破産宣告によって債務の整理をして再出発を期した。この債務の調査をしたところ、名目数百万円の残債となっているサラ金業者のほとんどは既に過払い状況であることが判明した。つまり、住宅ローンを除いては既に負債はなくなっていて、逆に過払い請求ができる状況となっているのである。もう1年早くご相談頂いていたら、離婚をすることも負債に苦しむことなく、親子が平凡な幸せな生活を送れていたということである。rnrn新たに受任した事件では、最近のグレーゾーンに関する報道をみて、自分の場合ももう既に支払う必要のないものなのではないかと疑問を抱いての相談であった。既に離婚をしていて、なおも支払いをを継続しているが、25万円ぐらいの給料のうち18万円位を支払いに充当し、さらに足らない部分は借り増しをしながら対応している状況であった。この人の場合は、数社の債務を1社にまとめるということもなされていて借入の連続性がなくなっているものもあるが、既に10年近くこのような取引をしている。過払い請求となりそうであるが、とりあえず債務調査からはいっている。高金利が単に経済被害ということではなく、離婚に至り、職を失い、生活そのものを破綻させていくということを身近に実感する。rnrn金融庁は、既に貸し出し金利を利息制限法の範囲内に引き下げ、グレーゾーンを無くすとの方針を明らかにしてきていた。これは、今年1月に最高裁判決によって、利息制限法を超える金利の取得が実質的に違法であるとの判断が確定したことへの対応でもあった。ところが、報道によると与謝野馨金融・経済財政担当相は24日の会見で消費者金融の貸出金利の上限が引き下げられた後に、少額・短期の貸し出しに限り上限を超えた金利を認める「特例」について、3年程度の時限的措置にすることで調整に入ったことを明らかにした。アメリカからも金利規制を強化するとヤミ金に流れるので、グレーゾーンは廃止すべきでないとの意見が政府に寄せられているようだ。日本のサラ金業者と同じ主張が米国政府からなされている。日本の外資系サラ金業者の米国での巻き返しの結果であろう。麻薬を禁止すれば暴力団に資金が流れるから禁止すべきでないと言っていることと同じである。利息制限法を超える金利は不当利得になるとの古典的な最高裁判決の姿勢が今年1月の判例によって再確認されたと評価されていい。この状況と悲惨なサラ金被害の実態をみれば、特例を設けてまたまた業者を保護する必要はどこにもない。政治はこうして資本の力を背景としたロビー活動によって動かされていく。しっかりとこれを司法でチェックしなければならない。我々のこうした事件への取り組みはこの役割をになっているのだと思いながら、この種の相談に対応している。

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