家裁の調停事件

2010年8月10日

午前中は,遺産分割をめぐる調停事件であった。遺産分割事件であるから互いに相続権のある極めて近い関係にある人々の間の事件である。互いの人間関係が凝縮し,それが一挙に表面化する時となる。親子だからなんとか分かり合えることがあるのではないかと期待していたが,最後まで争わざるをえない状況となった。

調停の待合室は,申立人側と相手方側とに別れている。そこにはいると長いすがいくつか置かれていて,そこに後からはいってきた人が「病院の待合室みたい」と声を漏らしていたが,まさにそのような雰囲気である。そして,呼ばれるのは決して名前では呼ばれない。プライバシーへの配慮から名前は呼ばないのである。事件番号で呼ぶ。病院では,薬をもらうのは番号で呼ばれるが,診察のときはたいてい名前で呼ばれるはずである。病院の待合いではなく,人格を無視した刑務所の受刑者のようであり,きもちがそぐわない。調停委員が呼びにきたが,2回目であり,あちらも当方のことがわかっていて,目配せで「どうぞ」と言われた。番号で呼ばれる嫌な感じを回避できた。

この待合室に「家栽の人」というコミックが置かれている。家庭裁判所の人間味ある裁判官が主人公の漫画である。この漫画を描いた魚戸おさむさんには私の出版した本の表紙を描いてもらった方である。そのよしみで,いちど食事をご一緒したことがある。元はと言えば絵本作家の方であったはずである。いまは,ビッグコミックで「玄米先生の弁当箱」を連載している。なんとなく味のある絵を描く人で,私の本の表紙を描いていただいたことを誇りにしている。待合室で魚戸さんの「家裁の人」の本があるのをみるだけで,何となく心がなごまされる思いをした。

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