天衣無縫

2006年5月31日

天衣無縫とは豪放磊落とか天真爛漫な性格のことをいうことだと思っていた。その意味もあるが技巧のあとがなく、ごく自然で完全なことの意味もあるとのことである。考えてみれば字の意味からみるとそう解釈するのが一番であるが、この意味ではあまり使ったことはなかった。書家である依頼者からきょういただいた色紙に天衣無縫と書かれ、純粋に自然な流れの意であるとの説明を受けてこのことを改めて認識した。rnrnこの依頼者とは既に10数年前からのつきあいである。最初はお母さんが医療過誤でなくなられ、病院と医師を相手に裁判をしたことに始まる。そのころいくつか書をいただいたが、高等裁判所で裁判に実質的に勝訴の和解ができたころ大作をいただいた。この書は私の執務場所に掲げている。実は草書なので説明がないと何とかいていただいたか読めないのであるが、力強さと緊迫感の漂うものである。そのことがあって何度か事務所に寄られたが、その書を見ながら今はこのときのようにどうしても書けないのですとこぼしていた。そしてしばらくして相談にこられた。rnrn離婚をして1人で生活していて、ある事件に巻き込まれて経済的にも破綻し、その処理についての相談であった。そのときも、私の脇に掲げている書をみつめながらもう一度あのようにかけるようになれないだろうかと言っていた。そして、このとき依頼を受けた事件は1年ほど前にやっと処理を終えていた。そして、今回は、子供さんの学校事故での相談であった。離婚をしても子どもとのつながりはしっかりと持っていて、その活発な子供さんの学校での活動をめぐる学校側の対応に納得できず、交渉をして欲しいとのことであった。現在その手続きの準備中である。rnrnそして、きょうは「私の納得いく作品が書けたので、もらってください」と「天衣無縫」と書かれた色紙と額を持ってきてくれたのである。彼の生活はまだまだ軌道にのったとは言い難い状況にある。しかし、以前にやっていた書道塾を再開することになったというのである。自信をもって天衣無縫と書くことができ、前の自分をとりもどしてきているという言葉の中に、経済的には厳しい生活をしながらも充実した日々を取り戻しつつあることを感じることができた。「天衣無縫」とは天使のはごもろのように純粋に自然な流れのことですとの説明を残していつになく元気な様子で帰っていった。

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