拘置所の中

2010年9月4日

先日,1審判決で実刑判決をうけ,拘置所に勾留されている被告人のところへ接見にでかけた。執行猶予がつくかどうか微妙な事件であり,被告人にもいくぶんか執行猶予を期待していた事件だけに被告人のショックは大きい。求刑を大幅に下回っての実刑判決であり,裁判官も「1審では実刑としました」とコメントし,暗に控訴審で再び審理を受けることを促しているようでもあった。

そんな被告人のところへ,精神的に動揺していると思われ,これからの審理に向けての準備などのことを話をして,落ち着いて控訴審に臨めるように接見にでかけたのであった。案の上,夜も眠れなく,食事ものどを通らなくなっていた。そして,薬を処方してもらっていたようであった。1審判決があるまでは警察の留置場にいた。ここは冷房があり,弁護士の接見も夜遅くまで対応してもらえていて便利がいい。しかし,留置場は代用監獄と言われているように,あくまでも代用であり,被告人と対立当事者となる捜査機関が管理する場所で,法務省,刑務所の管理する拘置所とは異なる。しかし,拘置所には冷房がない。弁護士との接見も一般の人の接見と同様,いつでも接見できると言う状況ではない。日中は,予定の事件処理で事務所を離れられないときに,接見に急に行く必要ができてもこれには時間的に応じることができないことがある。そして,連日のこの暑さである。冷房のないなかで過ごさざるを得ない。時計もない。食事の出る時間,夕方のラジオ放送など生活のリズムで時間を知るようにならされる。その食事時間も夕食は職員の勤務時間との関係か4時30分頃から始まる。これが無罪の推定される被告人の生活なのである。刑の執行の苦役を受けているのと同じではないか。異常な暑さのなか,判決の内容で悩むばかりでなく,暑さで精神的な安定を失ってしまう。用事はないけれど,来週も接見に来て欲しいとの要請があったので,昨日接見した。

精神的には,先週の接見で楽になったようであった。被告人にとっては,弁護人と会うだけで,精神的には落ち着くものである。弁護人の被告人との接見は、欠かすことのできない基本的な職務である。昨日の接見では,接見室の隔たれたアクリル板の向こう側に笑顔が見られたのは私にとっても救いであった。

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