5年越しの遺産分割が解決へ

2007年4月20日

事務所の窓から完成したばかりの裁判所がよく見える。前の建物は3階建てであったが新築の裁判所は6階建てであり,その大きさも従来とはずいぶん大きくなり,威容を誇っていると表現していい岡山の新しいランドマークである。

今日の打ち合わせは,この建物がよく見える位置のテーブルで行った。依頼者は,「私がこの事務所に来はじめてまもなくして建物取り壊し工事が始まったが,その建物が完成するまで事件が続いたということなのですね」と感慨深げにこの建物を見つめていた。この人は,打ち合わせにくるごとに裁判所の形が変わっていくのをじっと見つめていたのだろう。父親の死に伴い,遺産分割を求める調停,遺言書無効を求める裁判,遺留分を求める裁判などが別々の兄弟から起こされ,別々に裁判が進み,控訴審まで続き,エンドレスな紛争となっていた。しかし,不満足なもののもう争うのは嫌であるという気持ちからか,話し合いの解決となりそうであり,和解条件に基本的に合意すると表明があったのである。

私の依頼者は,これまでに家族の間にも不幸な出来事があったり,その気持ちを考えるといたたまれない気持ちで打ち合わせをすることがあった。しかし,きょうは本当にすっきりとした笑顔で早く解決したいことを私に告げ,相手方からの条件についてもそうしたいのならそうすればいいなどとさばさばと受け入れる意思を明確に伝えるのである。長い解決までの月日のうちに,家族の平穏を取り戻し,これからの人生がしっかりと見えてきたときの気持ちの余裕がこのような気持ちにさせたのだろうか。法律的に言えばまだまだいくつもの裁判があってもおかしくはない状況であったエンドレスな事件と思われていただけに私もほっとして今日の打ち合わせをすることができた。次回の高等裁判所での和解は,5年越しの遺産分割問題に関してめでたく終止符を打つことができる。窓の外の新しい裁判所の完成をこうした感慨をもって依頼者はながめることができていたのだろう。

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