「消費者庁」はできるか?

2008年1月23日

国会での福田首相の答弁で消費者重視の立場が明確にされた。公明党太田代表も「消費者庁」設置の考えを明らかにしているインタビューの様子が報道されていた。こんどこそ,消費者庁が実現されるかもしれないと期待をもたされる。

日本の省庁は,もともと戦後復興を大きく前進させるため,産業育成官庁によって構成され,その行政は縦割り行政であった。従って,本来的に個別の産業界に属しない消費者の利益を守る省庁はなく,横断的な消費者行政はできない仕組みになっていた。こうした矛盾が大きく指摘されたのは昭和60年に破綻した豊田商事事件の時であった。警察庁,法務省,大蔵省,通産省などに弁護団からも豊田商法の違法性を早くから指摘し,対応を要請してきていた。国会でもとりあげられることもあったが,ついに何もしないまま1400億円といわれた戦後最大の消費者被害事件となってしまったのである。

この事件を契機に,日弁連のなかに消費者問題対策委員会が発足し,1989年11月には松江で開催された人権大会でシンポジュームを担当した。このシンポジュームの提言の一つが「消費者庁の実現を」であった。具体的な消費者庁の権限,組織,役割などを提言した。その後,消費者庁の実現を目指して政府への働きかけも行った。しかし,その壁は厚かった。ここにきて急に「消費者庁」論議である。なにを今更と思う反面,今度こそ実現させて欲しいと願って止まない。このときの提言にはPL法の制定,情報公開法の制定などを消費者の権利として位置づけ,その後も立法の実現に向けて運動に取り組んだ。これらは,その後実現している。

日弁連に消費者問題対策委員会ができた当時は,消費者問題を扱う弁護士は少数であった。そんな事件をやっていると企業の依頼はなくなるぞとか,消費者問題で飯が食えるかなどと冷ややかな目で見られていた。公害問題に関しても同じようなことが言われていた。今や,環境問題,消費者問題は日のあたる注目される問題である。それで飯が食えるかと言われれば厳しい側面はあるが,それぞれ扱うのに生き甲斐のある分野である。その環境問題,消費者問題にずっと関わってきた。しかも,仕事にやりがいを感じながら,なんとか食ってきた。

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