涙するもの

2008年5月21日

今日も,死刑判決が大阪高等裁判所であった。裁判長は,1年6ヶ月を岡山地方裁判所に配属されて一緒に実務修習期間を過ごした同期生である。彼は,複数の死刑判決に関わっているはずだ。かすかな記憶であるが,修習時代に死刑のことが話題となったときに,極めて慎重な意見を言っていたと思う。その彼がその時と変わることなく,そして10年ほど前までの時代であれば,おそらく死刑判決は避けたであろうと思われる。死刑判決を決断するまでの間,そして死刑を言い渡し終えた今日のこの時間,彼はどんな気持ちであろうか。心穏やかな気持ちではないだろう。命の重みに誰も違いないはずであるが,しかし,確かに人の命を選別している。価値ある命と消してしまうべき命とに。その判断を過ちだらけの不完全な人間がしてしまうのである。裁判員裁判の始まりは,この死刑制度に大きな議論を呼び起こすことになるだろう。

きょうは,涙してしまった。ミュージカル「夢があるから」を観たからだ。ミュージカルのストーリーはどれも単純であるが,音楽の持つ力なのだろうか,感動を呼び起こす。涙してしまったミュージカルのストーリーはこうだ。戦後間もないアメリカで,ジャップと虐げられながらも歯医者として一応の生活をしている家庭で育った主人公。父からもらったミュージカルのチケットが縁でブロードウエイの舞台に立つことを夢見て頑張り,あこがれのスターと同じ舞台にたつことになる。しかし,そのスターからは,黄色人種に対する激しい嫌がらせが続く。やがて,皇太子結婚がテレビで放映されることになったことから日本でもテレビが一挙に普及してくる。そんななかで,主人公は日本に帰り,「シャボン玉ホリディ」のようなバラエティ番組の振り付けを担当し,担当した番組が高視聴率をあげ,成功する。しかし,ここでも力を持つスター(おそらく美空ひばりのような人)から嫌がらせをうけ,仕事をすべて失うこととなる。その失意の中にいるなか,かつてブロードウエーの舞台で一緒だったスターからはかつての自分をわび,新しくつくるハリウッド映画の振り付けを担当して欲しいと救いの仕事がはいるという物語である。観ていても筋は先に読めてしまう単純さである。

涙する場面が2箇所あった。まずはリハーサル中にトップスターから嫌がらせを受け,主人公である振り付け師にリハーサルを拒否して,自分でやってみろといわれて心ならずも歌い,ダンスをすることになったときだ。このときのテーマは,もっとも自分の好きなものでブロードウエィで100回以上も観てきていたものであった。心ならずもやることになったが,ミュージカルにはいるきっかけとなったあこがれの演し物を命令とはいえ,やれた時である。どんな思いで歌っているだろうかとおもうと感情がこみ上げてきた。そして,もちろん最後のあこがれてはいたが,いじめ抜かれたスターが,ハリウッドスターとなり,自らを恥じてこの主人公に謝りに日本にきて,彼女を失意のなかから救い出した時である。「夢があるから〜」というテーマソングに力づけられ,約3時間を過ごした。

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