今年最後の出張

2008年12月25日

日弁連の司法改革実施対策会議に出席のため日帰りで東京への出張であった。今年は,今日で約40回飛行機にのったことになる。そのうち6回分は,海外旅行をしたときの私的な利用であるが,他はすべて業務上である。23日は,天皇誕生日で休日となっていて,この出張で年末の押し迫ったときの貴重な時間が費やされて,追いつめられるような気持ちになってくる。

今日の会議は,裁判員裁判への対応,それに伴う速記官制度に関する提言のまとめ,法科大学院の文科省の対応への検討などであった。先進国と言われる国にあって,司法に国民が参加する制度を持たないのは日本ぐらいしかない。捜査が暗闇に閉ざされたままで録画されていないのは日本ぐらいしかない。死刑判決が再審無罪となるような裁判が繰り返されてきた実態はいまなお変化がない。しかし,裁判員制度の実施は国民の司法への参加によってこれに変化をもたらそうとしている。そうした大きく変化をしようとし,変化の力を持っている裁判制度に会内でも消極的な意見がかなりある。

こうした疑問に明確に答えてくれる本がある。今日の会議のなかで,メンバーの一人が紹介されたので,すぐに帰りに購入し,読んだ。裁判員裁判導入までに私たちが論議してきたことと同じ視点でアメリカの弁護士が書いた本である。その議論をもう忘れて,裁判員裁判をつぶそうとしたり,当面延期しようという意見があちこちで言われている。今一度,なんのために我々は司法への国民参加の制度を求めてきたのか思い起こすべきではないだろうか。その意味でこの本は第三者の客観的な視点から原点に立ち返って考えることのできる資料を提供してくれたものといえる。平凡社新書「アメリカ人弁護士が見た裁判員制度」コリンP.A.ジョーンズ著である。もっとも,最高裁も,法務省も裁判員裁判を司法への国民参加の制度とは捉えてなく,単に司法への理解をえて信頼を得るためのものと考えているところに我々弁護士の立場とは大きく異なる

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