両院協議会

2009年1月27日

08年度第2次補正予算案は、衆議院で議決を経た後,参議院で特別給付金などの扱いをめぐって与野党の意見が対立し,否決された。そして両院協議会に付されたが,この協議が進行せず,明日以降にもちこされたとのことである。

予算については,衆議院でまず審議しなければならない(憲法60条1項)。この予算案について,参議院が衆議院と異なった議決をしたときは,両議員の協議会を開催しなければならず,その協議会においても意見が一致しないときは衆議院の議決をもって国会の議決とするとした(憲法60条2項)。予算という大切で,時間的な制約のある法案を,解散があってより国民の意思の反映がされていると制度上なっている衆議院で先に審議し,これが参議院で否決されても,両議員がなるべく一致できるように議論をつくし,それでも一致できる案が得られなければ,やむを得ず衆議院の議決したところによるとしたのが憲法の趣旨である。

ここで憲法の前提としている事実関係が既にない。今の衆議院は,議院内閣制によって選出されている首相を選挙を経ないまま既に2度も変えている。そのなかで参議院選挙が実施されている。国民の意思をより強く反映しているのはおかしなことに衆議院ではなく参議院となっている。実態からいうと参議院先議で,参議院の再議決で可決されるのが筋が通るというものだ。両議員協議会は,予算のように重要な案件に関して両議員が対立したままではその内容に問題ありとして,できうる限りその意見の相違を調整して成案を得て欲しいという制度である。両院協議会をもちかけられればこれを拒むことはできない(国会法88条)。ここで,成案を得る方法はある。特別給付金をはずしさすれば,衆参両議院の一致は得られるのである。憲法は民主主義のいいところを押さえている。単に多数決ではなく,議論を尽くして一致していくことを期待しているのである。

ところが,事実は憲法が望んでいるようには進んでいない。形だけの両議院協議会ですぐさま衆議院の議決を国会の議決としようとしている。さらに,こうした衆参の違った目で審議をし,一致しなければ協議をして一致点をみいだしてよりよい法案をえようという,民主主義の魂を参議院は不要であるとか,選挙制度をかえるべきだとかの議論に展開しているおぞましさがあることが悲しい。

司法試験の憲法の答案を書くような気持ちで,今の国会を冷静に考えてみた。

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